「真也」

「あ~?」



ライブのあと。

当たり前のように、楽屋にまで入り込む佳代子の、来ないうち。
哲は、そそくさと帰り支度を整えると。



「俺、明日忙しいんだ」

朝イチで配達行かなきゃなんねーし。
悪いけど先帰るな。




哲は、大学に通いながら、ちょっと特殊なバイトをしていた。

飲み屋で知り合った、髭のオッサンに拾われた、なんて、胡散臭い事を言った時には、本気で止めたのだけれども。


…だって、なぁ?

………なぁ。





「…おぅ」


佳代子どうすんだよ、と思いはしたものの。

最近の佳代子は、あまりに必死に色気攻めを演じていたものだから。


哲がうんざりするのも、わからなくはない、と思った。