それは一樹さんが悪いですね、と。


まだ整えていない髪を掻き上げた宇田川章介は、眉根を寄せる。



「女性の気持ちをそんな風に踏みにじるなんて、一樹さんも悪い方だ」


「今夜はウチに泊めても?」

「もちろん。そんな男のいる所へ帰る事はないでしょう」



「…………」



雅は、はいでもいいえでもなく、出された紅茶のカップで両手を温めながら。

章介と友典とが話すことを、俯いて聞いていた。





「………でも」

「でも、なんですか?」



俯いたままの雅には、見えていないはずだ。

朝食の準備をしていた由紀が、可笑しそうに笑いを堪えていることを。