克己の母親である、彼女。

一応、形だけは凱司の母親、とも言える。


普段、ひとりではあまり外に出して貰えない彼女は、ことのほか。
凱司と出掛けるのが、好きだった。


夫が他の女性に産ませて引き取った子など、普通はイヤだろうに、と凱司は思う。

やはり、自分と出会う前の女の子供だ、ということは、彼女の自信にも繋がるのだろうと思った。

現に、克己より歳下な深雪には、一度も会いたいと言ったことはなく。
凱司も深雪の話題は、一度も出したことは、ない。



要は、俺の母親より上だ、という自負が、俺に構いたがる理由だろ、と。


散々、買い物に付き合わされ、ようやく解放された帰り道に。

それが、どうという事でも無いかのように、笑いながら話す凱司の運転する車の助手席で。



鷹野はぐったりと、もう二度と行かねえ、と目を閉じた。