ほんとに残り物だから、茶色めですよ? と。


倉庫の裏口。

少しだけ鉢植えなんかが置いてある、ちょっと人目につかない、俺の一服所。

秘密基地のようなそこに、彼女は警戒心なんか無いようについて来て、赤い小さな弁当箱ごと俺に差し出す。



『はい、ダーリン、お弁当』

みたいなシチュエーション妄想は、当然、フル稼働中だ。




「あ、お箸使っていいですよ」

さすがに悪いかと思って、手に取らなかった彼女の箸は、さらりと差し出されて。

25を過ぎるというのに、『間接キス』なんて単語を思って、ドキドキした。

そんな動揺、見せるわけに行かないのだけど。





「改めて見ると、ほんと茶色いですね…!!」


うわぁ、なんか恥ずかしい、と笑う彼女の弁当は。

薄茶色の何かと、きんぴらごぼうと、何か混じった炒り卵の敷き詰められた、ご飯。