「コータさん~?」

どこですかー、と。



ほら、彼女の俺を呼ぶ声がする。

段ボール箱の積み重なった広い倉庫内は、死角だらけ。

彼女は最初から、コータさん、と俺を名前で呼んでいた。




「A-2~」

「はーい」


居場所を叫べば、可愛らしい、返事。


彼女は、こんな倉庫に居てはいけないくらい、可憐で。

高い位置で巻き止めた黒髪と、化粧気のない綺麗な白い肌。

細過ぎるくらいに細い腰は、抱き締めたら折れてしまいそうで。


夏の薄着の時、腕を上げた拍子に袖口から見えてしまった腋のラインが、今も目に焼き付いて離れない。




「いたいたー。コータさん、はいコーヒー」


手渡してくれた缶コーヒーは、今季初の、ホットコーヒー。


フォークリフトで荷を積んでいた手を止めて。

いつものように、ちょっと座れるように、比較的綺麗な段ボール箱を、床に置いた。