「お待たせっ」


ふ、と。
ローズ系の甘い、香り。

きちんと巻かれた髪も若々しい、でも、40代と思われる女性。




「あら!? ずいぶんと久しぶりな子がいるわね!」

すっかり艶っぽくなっちゃって!
これじゃあ凱ちゃんが手放さないのも解るわぁ!




「………………っ!?」

「………諦めろ」


ショックを受けたように固まる鷹野を、やや哀れむように見やって凱司は。

出されたコーヒーカップに、口を付けた。



「じゃあ今日は、えーっと………あなたも付き合ってくれるのね!」


「…鷹野、です」

「そうそう!鷹野くんだったわね!」


挨拶すらままならなかった鷹野の代わりに名を告げて。

やっぱり、綺麗な子同士が仲良さそうに寄り添ってるのって良いわよねぇ!

うちの克己くんも絵になる子だけど、鷹野くんの方が、凱ちゃんに映えるわ!



と。

きゃあきゃあはしゃいだ、その内容に。


凱司は、思い切り身を離そうとした鷹野の腕を掴んで。

視線を、逸らした。