「真ちゃん、入っていい?」

「どーぞー」


片手で開けようと手を伸ばしたら、先にドアが開く。

真ちゃんの部屋には来たことがなかったけれど。

家の規模から思うと、狭くて、散らかっていて。

真ちゃんの匂いが、した。





「お疲れ」

「真ちゃんも」



CDやら雑誌やらをよけて、トレイを置く。

ソファーに転がった真ちゃんは、着替えていない。


ただ髪を解いて。

全体的に黒っぽい部屋に、妙に溶け込んでいる。




「悪かったな、忙しい思いさせて」

「大丈夫。楽しかった」


コーヒー置くね、と振り返って見た真ちゃんは、もうすっかりへこたれていて。

なんだか、可笑しかった。





「真ちゃん真ちゃん、Trick or Treat?」

「…なに?」

「Trick …or Treat?」



怪訝そうに、それでも唇の端を自然に上げた真ちゃんの顔を覗き込む。