『ひねくれる奴とか、いなきゃおかしいんだ』
絶対、妬む奴もいる。
蔑まれてる、と感じる奴もいるはずだ。
『……金持ちの道楽…自己満足なんじゃねぇかな、ってさ』
母親がずっとやって来た事、全否定する気はねーのょ?
ただ、あんまり気持ちのいいもんじゃねぇな、ってさ。
「蜜」
濃くて甘い紅茶を運んでいた私を呼んだ、真ちゃんは。
もういいから座んなょ、と、私の頭をくしゃりと撫でた。
「こんなこき使ったのバレたら、哲に怒られちゃうデショ?」
いつもの声色は、ひそひそと。
ちょっと近すぎる距離で、私の耳を掠める。
「もう少し。キッチンえらい有り様で」
若奥様ぁ、と廊下から呼ぶ声。
「はぁい!」
「……………」
ためらいなく返事をした私に、目を丸くした真ちゃんに。
じゃあ、あとでね、と手を振った。