「…実家とかないよなぁ~…」


「…お前が勝手に付いてきたんだろ」

「……………そうだけど」

「エスコートはお前だ」



柿の渋を塗られた、門柱。
構えは、昔ながらの日本家屋。

建て替えをしたのか、趣を失ってしまった、建物。


宇田川章介のように、カチリと背筋を伸ばした男が、コーヒーを運んで来た。

その、ちらりと見える、手首までの和彫り。




「今、いらっしゃいますので」

「ああ」


男は、鷹野にちらりと視線をやると。
ますますお綺麗になって、と。

ややうつむき加減に、照れたように微笑んでから、その場から姿を消した。






「……が…凱」

「…………」

「…凱!?」

「……気にしたら負けだ」



「俺、嫌だ!!」


あああ…マジ来なきゃ良かった!
あんなイカツいの嫌だ…。


どっちだろう。


あのひと、どっちなんだろう!