終始、淡々とした態度を崩さずに出て来た凱司だけれども。

わかってます、と、思い詰めたような返事をしていた雅の緊張に、思わず小さく、ため息を吐いた。




「…手、ほどいてやる。後ろ向け」


「……まだ、いいです」

「……………」


「まだ、いいんです…」



車の助手席から、這い出るように降りて尚、雅は縛られたままでいることを、望む。





「…もういい」


色々と思って、縛り上げた。

この娘は対等の存在ではなく、自分の隷属であることを、視覚で示した。

交わしたらしい口約束は、約束としての形は成さない、とする為に。



僅かに体をよじって、解かないでくれと訴えた雅を無視して、紐をとく。



彼に、付け入る隙は禁物だ。

暗黙の了解など無いし、優し気に見えて、良心の呵責などは期待すら出来ない父なのだから。