ほんの数分で戻った、凱司の手には。
厚手のタオルと細い、紐。
「後ろ向け」
「…………………」
ぎゅ、と眉をひそめたままの凱司の、意図はわからない。
わからないながらに、逆らう気はないのか、雅は素直に、背中を向けた。
「………」
「両手よこせ」
後ろ手に、やや乱暴に引っ張った両手首。
厚手のタオルを巻きつけて。
上から、きつく、紐をかけた。
「……………」
「……………ごめんなさい…」
「…ああ」
完全に俯いて、小さく呟いた雅の体を、拘束して。
「そのまま、黙ってろ」
気にするな、と言ったところで、素直に忘れられる奴じゃないし、都合よく片付けられる器用さは備わっていない、と。
凱司は、俯く雅の体を、くるりと正面に向き直らせると、立ち上がらせた。