「…………わる…さ?」
「そう。大体、鷹野の事は俺が全て引き受けてんだ。親父が引くと言った“手”は、そもそも存在しねぇ」
きゅ、と。
雅の指に触れていた手が、不意に握られた。
ほんとに? と、わからない、とが同時に浮かんだ複雑に揺れた目は、わずかに生気を取り戻したように、見える。
「………うそ…ですか?」
「嘘、だ」
「……どこまで、が?」
「全て、が」
「……………………ぜんぶ?」
じわりと、雅の頬に赤味が差す。
両手で握った凱司の手を、そのまま胸に押しいだいて。
そのまま安堵して喜ぶかと思った雅の、目は。
ちらちらと幾度か瞬くと再び、みるみる沈んで行った。