「…treat or trick、と…言われなかったか?」


「……はい、最初に」




雅を、ソファーに座らせて。
冷たくなった指に、触れる。



「俺もガキの頃、毎年言われたが……意味は、なんだ?」


「…え?」

“お菓子を…くれなかったら悪戯するよ”じゃないですか…?

ハロウィンだから。




雅は、揺れに揺れた不安定な視線で、かろうじて、凱司の灰青の目を見つめて、首を傾けた。




「それは trick or treat」


「………え、逆ですか…?」

「そう。でも意味は逆じゃねぇ」



“ちゃんともてなさなきゃ、ひどい目に遭わせるぞ” ってとこだ。



「…ひどい、め?」


よくわからない、といった風に、雅はますます、首を傾ける。




「うちん中に入れなかったら悪さをする、入れたら入れたで、なんもされない訳がない」


お前は単に、“悪さ”をされたんだ。