今からこちらを離れますが…、ちょっと…その……お嬢さんの様子が……、と口ごもる男が、言いにくそうに。

ちょっと、怖がらせてしまったようで…、と。




すぐ戻る、と吐き捨てた凱司に、その男は幾度も、申し訳ありません、と繰り返していた。




「……なに、された」


「………まだ…なにも…」

「何された!!!」


「…………いぇ…ほんとに…」




ただ……鷹野さんと……………


「お別れ、しないと……いけないみたい…で……」





茫然と呟いた雅の目から、ぽろぽろと涙がこぼれると同時に。

多分父親が言ったであろう、分かりやすくも安い脅し文句に、ここまで真面目に引っ掛かるのも珍しい、と、凱司は。



苛立ち7割、安堵3割、の気持ちで、雅の体を、抱き上げた。