「…脱いでない、です」

「…………………今は、だろ」



無表情だった雅が、泣くまいと唇を噛んで、あまりにも震えた声を出したことに。

凱司は我に返ったのか、深く息を吐き出しながら、静かにそう呟いた。







確かに。
実家に居たはずの父親が、いつの間にか姿を消していたのは、気がついていた。

親子で仲良く語らいに行っていたわけではないのから、とりわけ、気にしなかっただけ、で。



父親にいつも付いていたはずの男が、捜していたのも見たけれど。





『すみません!!!!……あの…そちらのお若いメイドの…お嬢さんが…!!』


と。
まさか。

そいつから、直接、電話が来るなんて、思わなかった、だけで。