『限定品のプリン、あるんだけどな』


インターホン越しに、有名なプリン専門店の箱を見せられた所で、わあ嬉しい、と、喜べるわけもなく。




「……すみません」

お通し、できないんです。


雅は、凱司に似ているような気もする、その厚い色気のある年配の男の、以前よりも長めに整えられた髭を見ながら、しっかりと、そう言った。





『………お嬢さんも…僕には冷たくするのか……』


「…え?」


『…ほんとは…凱司くんと食べようと思って買っておいたのに…彼は最近ちっとも構ってくれなくてね』

お嬢さんなら僕に付き合ってくれるかと思って、わざわざ来たんだけど…。


仕方ない、か…。と、落胆したように息をついた、彼は。


じゃあ、…置いていくよ。
二個しかないから、君と凱司くんで食べればいい。

僕は諦めるから、と、肩を落とした。