その夜に。

楽しげにケーキを切り分ける雅の指には、鷹野と揃いの指輪。

これ買って貰いました、と嬉しそうに笑む雅に。




「なんか、色んな辺りから適当に預かって来た」

誕生日のプレゼントだと。



「色んな辺り!?」

「宇田川とか…坂崎とか……辺りだ辺り。誰のがどれだか忘れた」


「えぇ…お礼も言えないじゃないですか……」




どさり、と置かれた紙袋。


一番上には、指輪を買った店のロゴ。

Happy birthday のカードが無記名で差し込まれた、白い小さな、箱、




「…あ、これ……」


ぱくん、と開けたその中は。



濡れたような銀色の、小さなリンゴ。

ぽつりと一粒はめ込まれた、雅の赤い、誕生石。



無記名のカードと、プラチナのリンゴとを見比べて、雅は。


誰からですか、とは訊こうとしないまま。



淡く、ふわりと。
笑みを浮かべた。




~終わり~