「あ、こちらに来るおつもりですね」


宇田川のセリフに、びくりと固まった男は、おろおろと凱司を見た。



「……ったく…」

「大丈夫ですよ、3つの時に別れたきりです。父親の顔など、忘れてますよ」



宇田川の言い回しに、凱司は表情を変えなかったけれど。

そうでしょうか、とでも言いたげな期待の色と。
そうでしょうね、という、従順な落胆の色とを同時に滲ませた男は。




凱司さん? と。

不意に背後から聞こえた声に、息を、止めた。



「…あ、すみません」


お仕事ですね、と。

少し離れた所から、申し訳なさそうに話す、声。




「いい。ちょっと来い」


何を買った、と手招いた凱司に戸惑いつつ、遠慮がちに近づいた雅の、姿。