高く壁に押し付けられた男は。
冷たい灰青の目に、はっきりと怯んだ色を浮かべた。
口を裂かんばかりに掴み上げる手を外そうと、もがけばもがくほどに、身動きが取れなくなる。
「……俺…が…」
ぽつりと呟いた凱司の、押し殺したような、声。
「………ただでさえ、自己嫌悪に陥ってんのに………」
…こちとら、具合悪ぃんだ!!
飲み過ぎたんだよ!!
このガキと約束あったのに、飲みすぎて具合悪ぃんだ!!
それをなんだ!!
てめぇは昼間から飲んだくれて、気分悪い女にちょっかいかけんのか!!!
それも、俺のツレだ!!!!
なじることも出来やしねぇ馬鹿ガキだ!!
ちょっと目を離すとコレか!!!
「あの……あたし大丈…」
「お前は黙ってろ!!」
びく、と肩をすくめて口を噤んだ雅をも、勢いに任せて、思い切り睨みつけた。