鬱々と、苛々と。
凱司の不機嫌は、目の前の光景に、最高潮にまで高まった。
わかりやすく絡まれている雅と、昼間から酔っているのか、やたらと馴れ馴れしい、男。
それだけならば、蹴散らせば済む話だけれども。
こんなにも、苛立つ事もないけれど。
「…ちッ」
雅が、こっちを見ない。
いや、見た。
見たのに。
目を、逸らした。
まるで、見つかったら叱られる、とばかりに。
「ぅうわっ…」
ツカツカと。
背後から近寄った凱司に、いきなり髪を掴まれた男は。
振り向けないまでも、自分が何かヤバいものに捕まった事はわかったのだろう。
何かを喚こうとして開けた口ごと、顔面を掴まれて目を見開いた。