「花火って……」

綺麗、ですね。

こんな近くで見たの、久しぶりです。





雅にとって、忌むべき記憶でしかない、花火大会の夜。

きゅ、と手を握りなおして見上げた雅は。


鷹野さん、ほんとに浴衣、似合ってますね。
なんだか違う人みたいで、あたし……ちょっと緊張します、と。

綺麗に編み込んだ髪を片手で撫でて、頬を染めた。




呼吸は、浅いけれど。

これで雷雨が来たら、どうなるか分からないけれど。

今、浮かべている笑みは、決して無理をしているものでは、ない。




「……雅ちゃん、キス…していい?」


花火大会の夜だけど。
キスをしても、怖くない?



「え?今ですか?」

「うん」

「だって……人がいっぱい…」

「ちょっとだから」





…わかった。
由紀さん、わかった。

どうして無理に、連れ出したのか。