夜道を、歩く。
ざわざわと人のひしめく、道。



先を歩くのは、宇田川夫妻。
その先には、笠島凱司。

振り向いて手招く凱司に、駆け寄るように近づいた、友典。


化粧をして尚、青白く血の気を引かせた雅と。

その緊張した細い手を握る、鷹野一樹。





「雅ちゃん」


大丈夫か、と顔を覗き込めば。

呼吸は浅く、けれども、きゅ、と握り返す手は、震えてはいない。




「……大丈夫、です」


まるで、大丈夫な事が意外な事であったかのような、微かな笑顔。



ど……ん、と。

近くで上がり始めた花火の、重い空気の振動は、僅かに雅の手に、緊張を走らせただけ。




「………ぁ…綺麗…」


ぱちぱちと、火薬の弾ける音すら聞こえる、距離。

花火大会の、真っ只中。