店内では無い。

構えた店舗とは別の、仕立てをするような、場所。

の、隅。



呆れたようにも、面白そうにも見える顔で、しばらく眺めていた由紀も、ふと笑みを零した。



「雅さんのお好きな帯は、どれですか?」


すっかり呑まれて、鷹野のなすがままだった雅は、困ったように首を傾げた。



「……あの…あたし………このピンクのが…」

可愛いなーって……思うんですけど…


と、恐る恐る手に触れた、少し光沢のあるような、ピンクというよりも、濃淡のある桃色。



「一樹さん、帯はこれだそうですよ」

これに合わせて、選んで差し上げたら?


くすくすと笑いながら差し出された帯を手に取り、睨みつけるように凝視した鷹野は。




「それなら、これ」


と。

濃厚なクリーム色の、しっかりとした布地を、 いきなり抜き出した。


今まで散々悩んだのが、嘘のように。