「……あの…鷹野さん?」

「…………」



由紀の経営する、アパレルショップ。
厳選した浴衣の、生地。


雅さんに合いそうな布地をピックアップしてありますから、是非見にいらしてくださいな、と声を掛けられて。

勿体ないからいらない、などとは言えなかった雅を連れて訪れた、鷹野は。




「…………捨てがたい…」

「…え?」



絞りに絞った数種類を手に取っては戻すこと、数十回。




「…………黒もいい。ピンクもいい。緑もいい」


「…あの………」

あたし、一番安いので………




「くっそぅ………藍染も捨てがたい…!!」




当の雅の事など、すっかり無視したまま、布地に溺れるように、眉間に皺を寄せていた。