「…………しな、い?」

「うん、してないよ」




哲は、確かに。
嫌だと訴えた私を無視しようとしたけれど。

私が一瞬泣きそうに顔を歪めたのを、見逃さなかったんだ。


哲の、吹き飛んでいたはずの正常な判断力は、怖い、と訴えた私の声に、かすかに反応したに違いなくて。





「……俺、えらかった?」

「えらくはない」



スイッチ切れたみたいに、私を押しつぶして寝ちゃっただけだもん。

死ぬかと思ったけど、ちょっとずらせたから。




「でも飲み過ぎだよ、哲」


「………ごめん」



隣に座って、わざわざ顔を覗き込んだ私を、ちらりと横目で見てから、哲は。


大きく大きく、息を吐き出してから、ゆっくりとスープカップに、口を付けた。