どうも、この娘の前では平静を保てない、と。

今更ながらに頭を振る宇田川は、押されるままにバスルームに消えた凱司もそうなのだろうか、と思った。




「…何か、御用でしたか?」

「あ」


そうでした。
今日ね、由紀さんのお誕生日でしょう?と。

くるくると表情を変える雅は、コーヒーカップを並べながら、にこりと微笑んだ。




「……あ、はい」

「…………また忘れてたとか…ないですよね…?」


「なっ…ないです!ちゃんと覚えてました!!」

去年は、忘れてしまって…すっかり拗ねられてしまいましたし……。



「今年は友典も、気にかけてましたから…大丈夫です」



そうですか、と。

安心したように笑顔になった雅は、宇田川の袖を、小さくつまんで、引き立てた。