それでも、と宇田川は思う。

もしかしたら雅は、思うよりも急速に成長しているのではないか、と。


以前ならば。

泣く前に諦めて、閉ざしたような目で。
大丈夫です、と笑むのではないだろうか、と思った。



「………」


目の前で、まるで鷹野一樹のように顔を寄せて、悪かった、と囁き続ける凱司もまた。

どこか、変わったのではないだろうか。





「……お前の好きなプリン、買ってやるから!」


「………チェリーパイ…も!」

「わかった!わかったから、もう泣くな」



だいぶ落ち着いて来たのを見計らう凱司と、素直に応じる雅のじゃれつき。


…あと…さくらんぼの軸、口の中で結んで下さい……

などと、ようやく目を上げた雅の泣き顔と。

ほっとしたように息を吐いた、凱司の苦笑とは。



何となく、何となく。
ひどく初々しいものに見えて。


宇田川は再び視線を、逸らした。




~終わりw~