雅はこれでも、こらえているのだろうと、思う。

ただ、こらえきれていないだけで。




自宅について、敷きっぱなしのバスタオルと、いくつか落ちているさくらんぼの種と、軸に。

雅の嗚咽は、ひどくなった。




「………あの…」

「黙れ」


おろおろと様子を窺う宇田川は、再び声を掛けたけれど。

困り切った顔の凱司に、一蹴されて、やっぱり黙り込む。




「………雅」


…許せ。
忘れろ。

あの見境のない馬鹿親父は、馬鹿なんだ。

女と見れば、口説かねぇと勿体無いと思ってるような奴なんだ。



「……そんな…泣くな」


な?
…悪かった。