宇田川の運転する車の、後部座席。

革張りのシートに深く腰掛けた凱司に、ぴったりとくっつくようにして雅は。


号泣、という程では無いにしろ、ほろほろと涙を零し、しきりに、しゃくりあげるのを。

隠そうとはしなかった。





「…………もう、泣くな」

「……っ…」


ひっく、と。

右手は、凱司の指を握ったまま、左手で涙を拭う。




「……あの…」


車に乗り込んだ途端の、ある意味、異常事態に宇田川は。

バックミラー越しに心配そうに見やり、ようやく声を発した。




「………どう…された…ん…」


「……ぅぅぅ~…!!」

「…………あああぁ……」



途端、ますます顔を歪めて、ぼろぼろと拭いきれない涙を溢れさせた雅に。

宇田川も、凱司も。


為す術はなかった。