もぐ、と。

雅が困り果てた顔で、さくらんぼを噛むのを、彼は、じっと見つめる。

こんなに見る人はいないんじゃないかと思うくらい、見つめたまま。




「種」


はい、と手のひらを出した彼に、雅は固まった。



「……いえ…まだ…」


ゆっくり、食べてます、と目を泳がせた雅を尚も見つめたまま、彼は。


さくらんぼの軸を、口の中で結べる?

と、やけに楽しそうに、軸ごと口に放り込んだ。




ちらりと見た、彼の目は、やっぱり凱司に似ていて。

本当にお父様なら、やっぱり通すべき?、と雅の頭を悩ませる。