「…………」

「……………」



しばらく、無言、だった。


雅からすれば、家の中に入れてあげていない事は、ひどく気にかかるところ。

でも、誰も入れてはいけない、と言い含められているのも、事実。


隣に座らされたまでは、まだ良いけれど、じっとあからさまに見つめてくるのは、どうしたらいいのか、わからない。





「…………」

「ほんとに凱司くんは、可愛らしいお嬢さんをさらって来たもんだ」



彼は、優しいかい? と。

持って来たらしい、さくらんぼの箱を開けて。

キラキラのひと粒を、自分の口に放り込んだ。




「………あの…さらわれた訳では…」



うん?
ああ、今年もいい香りだ。

ほら。



まるで人の話を聞くつもりはないのか、ぷちりと軸を外した彼は。

雅の口にも、さくらんぼを押し込んだ。