「あれ、今日は兄ちゃんが買い物かぃ?」



電車に乗って、最寄りの駅を降りた。

1本道を外れた、商店街。




「ええ」

「どうした、風邪でも引いたか?」



店じまいをしていたのか、抱えていた段ボール箱を置いてまで気にかけたのは、青果店の店主。




「熱を出しまして」


「そりゃいけねぇ。いつもあの子には良くして貰ってるからなぁ」

おい、ちょっとそこの林檎、いくつか袋につめてやれ、と。

妻に言いながら。


デカい方の兄ちゃんが看てんのかぃ?と、からかうように、鷹野を見上げた。




ずしり、と。
また増えた“見舞い”。

白いビニール袋の持ち手が食い込むのは、林檎の上に乗った、バナナ一房と、苺のせい。