咲き過ぎちゃって、明日はもう商品にならないの、と。

銀の筒から、無造作に引き抜かれた、花。


赤いような、茶色いような。

紅茶のような色合いの、バラ。





「ブラックティー、って覚えていてあげて」

あの子はいつも、品種名を知りたがるから。



長い茎を整えて。

1本1本、色の混ざり具合の違う、バラ。

くるくるとセロファンでつつまれたそれに、濃い緑のリボンを結んで。


お願いね、と押し付けられる。




「私、明日が出産予定日なの。次に会うときは、赤ちゃん見せて上げるから、早く元気になってね、って」


そう、伝えてね?





カフェから持たされた、ムース。
フラワーショップからの、バラ。


鷹野は片腕いっぱいの“お見舞い”を抱えて。

真っ直ぐに、駅に向かう。