鷹野さん、鷹野さん、と。

待ち構えていたかのように、道の向こうから呼ぶ、カフェのマスターから。

雅さんに差し上げてください、と、綺麗なクリスタルの器に入ったムースを渡されたから。


少なくとも、これは食べさせてあげられる。



夏風邪は長引きますし、すっかり治ってから来てくれればいいので、ちゃんと看てあげてくださいね、と。

ちゃんと、それも伝えないと。




今日はお一人?

と。



「……ええ、風邪を引いてしまって」


あら可哀想、と眉を下げた、お腹の大きな女性は。

何か買って帰ろうと寄った、いつものフラワーショップの店主。



「熱が?」

「ええ」


あら可哀想、と再び呟いた彼女は、ちょっと、と店の奥に鷹野を手招いた。