「こっち!!!」
「……ッ!!」
抱え込まれるように、肩を引かれた。
かろうじて視界に入った、その手は、ふっくりと白い、でも小さな火傷のある、女の手。
「駄目じゃないの、体冷やしちゃ!雨宿りくらいしなさい!」
「…………ぃ…」
はい、と言うつもりが、声も体も震えて、発音できない。
目の前の女性は、エプロン姿で。
七夕祭りに店を出した、商店街のひと、だろうと思った。
「大丈夫!?」
連れ込まれた建物は、その女性の店なのか、バスタオル!と奥に向かって叫びながら、雅の貼りついた前髪を、大きく撫で上げた。
「どうして雨宿りしないの!」
女の子がそんな濡れてたら、おかしな人に連れて行かれちゃうよ!?
きゅうっ、と粟立つような波が。
雅の全身を、冷たく強ばらせた。