店をたたむような素振り。
強い雨風に備えたような、ざわざわした動きと、急に吹き出した冷たい風に。
雅は立ちすくんだ。
ざわざわ、ざわざわと、笹は不吉な音を立てて鳴り、『いちごやさんになりたい』などという、無邪気で幼い字の短冊ですら、不気味なものに見える。
「…………ぁ…」
ぴかり、と。
視界の端に、光が見えた、数秒後に。
空気を低く伝わる、振動。
雅は、上がりかけた呼吸と心拍数を無理に抑えようと、息を止めた。
どうしよう。
どうしよう。
雷が、鳴る。
雨が、降る。
風が…冷たくて。
ひとりぼっち、で。
知らない人……が。