雅は、珍しく拗ねていた。


いつもなら。
大丈夫です、待ってますから今日のうちに帰って来てくださいね、と笑えるのに。





「……お掃除…しよ」


七夕の夜は、通常通りに帰れる、と言っていたのに。


お昼前に来た、鷹野からのメールは。

ごめんね、と。

急に予約が入っちゃって、
と。




「………仕方、ないけど」


雅は、薄荷のオイルを垂らした水に、雑巾を浸した。


リビングから玄関までの廊下を、足跡がつかないように、後ろ向きに拭き上げて来て。

誰もいない、静かなリビングに、つい泣きそうに、なった。