「雅、おいで。お寿司食べよう」



ひとりで、静かに座布団の上に丸くなっていた雅は、“食べよう”のフレーズに、ぱっと顔を上げた。



「ダメだよ貴史。小さい子にナマモノあげちゃ」

「そう…なの?」

「ダメダメ。お腹壊すから」



食べちゃダメなの? と、しょんぼりと様子を窺う雅を。

貴史と呼ばれた、父に似た顔立ちのひとは。

じゃあ、お菓子食べようか、と。
にこりと抱き上げた。




「…たべて、いい?」

「オレンジジュースもあるよ」


飲む?

と顔を覗き込まれた事と、父ではないひとに抱き上げられた事に、緊張した雅は。


くるくると辺りを見回して。





「…ううん」


よその人に、何か貰っちゃいけない、と。


首を横に振った。