「えー。今回、このような賞に選んでいただき本当に光栄に思っております。
ありがとうございます。
一生の思い出にします!」
場がドッと沸く。
ぺらぺらと記者の前で話す姿に、あたしは言葉もなく凝視し続けた。
堂々と笑顔でスポットライトを浴びている先生。
賞…とったんだ。
夢を叶えて小説家になったんだ。
驚くしかない。
「賞の受賞は、誰に最初に伝えましたか?」
「まだ誰にも伝えてません」
「では、誰に一番最初に伝えたいですか?」
記者の質問に、先生はちょっと笑う。
「…ご想像にお任せします」
「もしかして、大切な方ですか?」
茶化すような記者に、先生は無言で頷く。
大切な、方…
あたしだと思っていいのかな?
分からない。