──ガラッ
不意に扉が開き、ハッとしてそちらを向くと山田善一が立っていた。
何だお前か。
「八代先生っ。
俺告ったらオッケーもらった!」
「え、マジで?おめでとう!!
良かったじゃん、当たった甲斐あったじゃん」
本当は、今はそれどころではない。
でも、親身になったつもりで相談に応じた生徒が、わざわざ嬉しい報告をしに来てくれたことは満更でもなかった。
「相談乗ってくれてありがとう。先生のお陰だよ!」
「なーに言ってんだよ。お前のその素朴な人柄が功を成したんだよ。
だから、これからも真っ直ぐな気持ちを大切にしろよ」
山田の肩に手を置き力強く言うと、山田はじわしわと目を潤ませた。
な、泣くなーー!
男泣かせる趣味はない。断じてない。
「俺先生に一生感謝しながら生きる」
象の体重並みに重たいことを言い、じゃあ、これから彼女と帰る約束してるので、と身を翻す。
「あ、それと先生」
「ん?」
「但馬から伝言」
…嫌な予感がする。
「体調悪いから帰るそうです」