幻覚。否、家を間違えた。



ここは16年と2ヶ月過ごした家ではないんだ。


この年になって自分の家にたどり着けないなんて、バカにも程がある。


二菜は即座に回れ右して玄関を開けた。



「ゴメンナサイサヨウナラ」


「わー!?待て但馬!行くなっ。

ここはお前ん家だ、お前は何も間違ってない」


慌てて八代に引き止められ、二菜は安堵した。

そうか。あたしは正しいのか。



だったら何故担任が我が家に我が物顔で居座ってるんだろう。



新たな疑問が沸くと同時に嫌な予感がして、

二菜はごくりとつばを飲み込んで八代に詰め寄った。