《…カル?》

<!!――っ母さん!!>

王宮区での母
薄汚れた瞳とそれに反して美しいドレス
いたって健康そうで、食事も十分過ぎる程で

夜に部屋を出て行く母が
日に日に弱っていく様子は、幼い俺の心を締め付けた

何が行われているかわからない
俺が助けるコトは恐らくできない




そして

《カル…ごめんね》

<え?>

《バイバイ》

<…なっ>

母さんは与えられた部屋の窓からすぐ側の崖に飛び込んだ
なぜあの男はこんな高い部屋を俺達に与えたのだろう

母さんの最期は、本当に呆気ないモノだった

そしてあの男はそれから俺を優遇して育てた――