そうこうしている間に、壁の向こうで何かを殴るような激しい音がする。
「向こうさんは大変そうやなぁ。ご愁傷さまで」
「それにしてもすごい音だね」
私は壁に耳をつけて向こうの音をもっと詳しく拾おうとしてみた。
でも拾う音全てが殴るような音、倒れるような音、怒声、奇声、………
そっと耳を壁から離す。
「猫ちゃん……それ、意味ないと思うで」
「うん。私も今、そう思った」
戻ろうとすると少し慌てたような声が聞こえたような……?
もう一度耳をつけてみる。
「猫ちゃん?どうしたん?」
「静かに……」
……やっぱり、微かだけど聞こえる。
「……んでっ……!…くそ…っ……」
「…ど……しますか……お…づかさん……」
「…し…た……ねぇ……あいつを…………」
「…は…い。……りょうか……です」
バタバタとこちらに来る足音がいくつも聞こえる。
話の断片からだと、鬼火が押されているから人質の朱雀を盾にどうこうする、というところかな。
そんなことすれば火に油を注ぐ結果になるのは分かりきっているのに……
「馬鹿ね」
「ん?誰が?」
「こっちの話」
そう言いながら、私は近くにあった厚めの板を手持ちの部分に通す。