「、げほっ……ここで寝とったら、何も見えんに決まっとるやないか……」
苦しそうな声のする方に顔を向けると1人、床に寝ている男がいた。
こちらに背を向けているので私には気付いていないみたいだ。
「っつ……痛いわぁ……」
そう言って手足のロープを外そうとする。
とくに助ける理由もない私はそれを静かに見ていた。
「あのハゲ頭。こない強う縛って……解けんやないか」
ぶつぶつと言いながらそれでもロープを解こうとする男に、私は少し興味を持つ。
普段ならほっとくのにな……まぁ鬼火の総長と話していた内容も気になるしね。
私は足音をたてないように静かに男のもとへ行く。
近くに行くと、かなり大柄な男で鮮やかな赤い髪が目を引いた。
それにしても、酷い怪我。
後ろから見ても頭に殴られたような跡があるし、背中にもいくつかの跡があった。
この人、本当にどんな人なんだろう。族関係の人なのかな。
とりあえず怪我の手当てしないと。頭の怪我は出血が多いからね。
「ねぇ、大丈夫?」
「うぉっ!?」
私が声をかけると驚いたようにこちらを見た。
顔の怪我も酷いなぁ……と思いながら男の顔を見る。