「結局、名前の意味は分からずじまい、か……」



もっと聞きたかったな、お父さんの口から……



しばらく月を眺めていると、ガチャ、と微かに扉を開く音がした。


この気配は……



「まだ起きてたのか」


「うん…眠れなくてね」



振り向くと、思った通り、そこには太陽がいた。



「女の人の寝室を覗くなんて、警察呼んじゃうよ」



からかうように言うと、太陽は苦笑しながら悪いな、と謝った。



「もう夜も遅い。寝ろ」



太陽はゆっくり近づいて私の手をとった。


温かい、温かい手のひら。


あぁ、久しぶりに昔のことを思い出したからかな。


この手、お父さんとそっくり……



「満月?」



動かない私を不思議そうに見つめる。



優しいなぁ……


太陽はいつも優しい。


この手はどこまでも温かくて、みんなを守ってくれる手だ。



だから、安心する。


私も守ってくれるんだって、無意識に思うから。



………馬鹿みたい。


私に、守ってもらう資格なんてないのに。


それどころか、この温もりを感じる資格もない。


そばにいる資格だって……



「太陽、私、みんなに嘘ついてるよ。たくさん、みんなに秘密にしていることがあるよ」



どうして、こんなことを言おうとしたんだろう。


自分でも分からない。


もしかしたら、誰かに頼りたかったのかな。