『ねぇねぇ、どうしてみつきは"まんげつ"ってかくの?』



家の庭にあるベンチに座って、足をブラブラさせながら隣を見上げる。



『ん?そうだなぁ……満月が生まれたとき、綺麗で丸いお月さまが出てたからかな。

お月さまみたいに、暗い闇の中でも強く輝いて、苦しんでいる人を導けるような、優しい子になりますようにって。

あと、お父さんとお母さん、どちらにも共通している名前がよかったんだ』



穏やかに笑いながら、お父さんは私を見つめる。



『?へぇー、そうなんだぁ』


『うーん……満月にはまだ分かりにくかったか』



クスクスと優しい笑みをこぼして、お父さんは私をひょいっと膝の上に乗せ。


頭を撫でられる感触や背中に感じる温もりに、どうしようもなく安心する。



『大きくなったら、もう一度、ちゃんと説明してあげるな。お父さんとお母さんが願いをこめて付けた、満月の名前の意味を』


『うん。分かった!』



ぎゅうっと抱きしめられると感じた、爽やかな花の香り。


名前は覚えていないけど、この香りはお父さんが好きだった花の香り。


いつも庭に咲いていたっけ。


懐かしい……



小さな頃の、優しくて、暖かい、私の大切な思い出。