「彼女は、どれだけの覚悟をしているのだろうか……」



さっきの、彼女の言葉が頭に浮かぶ。





「まず最初に、これだけは理解してほしいのですが、私は私の事情に太陽たちを巻き込むつもりはありません。

巻き込むには、相手の存在は重すぎる……修羅様が知っているかどうかは分かりませんが、私はあの場所を黙って抜けました。

そして、もうだいぶ経ちました。きっと見つかるのは時間の問題……いざとなったら、潔く太陽たちの目の前から消えるつもりです」



真っ直ぐな瞳に、揺るがない声にこちらが戸惑ってしまう。



「君は、それでいいのかい?戻ればどうなるか、」


「そうですね……最悪の場合には殺されるかもしれません。それがあそこの日常ですから」



さらりと言われた言葉に、背筋に冷たいものが走る。


ふっと見せた大人っぽい顔。



「でも、私のせいで傷つく人はもう見たくないんです。

それが、大切な人ならなおさら」



そう言うとクスリと笑みをこぼした。



「今まで散々人を殺め、傷つけて、罪を重ねてきた私が言うのもおかしい話ですよね」



その瞳には、悲しみと自分に対しての軽蔑の色が浮かんでいた。



「その罪が消えるわけじゃない。そんなことは自分が一番よく分かっています。この温かな場所にいてはいけないことも……でも、今だけ……今だけでいいから、この場所にいることを許してくれませんか?」



あのときは闇しか映っていなかった灰色の瞳は、しっかりと意思のある強い光を放っている。