先に歩く冬麻さんの背中を見ながら、私は部屋の扉に鍵をかける。
カチャリと、この部屋と外の空間が切り離される音がいやに大きく聞こえた。
「……どういうことかな?」
私の行動に冬麻さんは穏やかな笑顔を浮かべるけど、その瞳は冷たい光を放っていた。
刺すような鋭い殺気。
皮膚がチリチリするようなこの感覚。
……懐かしい。
昔はこの空気の中で生きていたんだよね。
「冬麻さんと私の、二人だけの秘密の話をしたいので。邪魔、されたくないんです」
「…………」
それ以上冬麻さんは何も言わずに進んだので、私もそのあとにつづいた。
冬麻さんの座ったソファとは反対にあるソファに座って真っ直ぐに冬麻さんを見つめる。
「それで、話というのは何かな?」
あくまでも冷たい笑顔を崩さない冬麻さんに私も笑いかける。
「その前に、あなたのポケットの中にあるもの、出してくれませんか?」
「ほぅ……」
スッと目が細められる。
「どうして分かったのかな?」
「さっき、ポケットに触っていたみたいなので。言いましたよね?私、"二人だけの秘密の話"がしたいんです」
ニッコリと笑うと、冬麻さんはポケットの中から録音テープを取り出してテーブルの上に置いた。
「これでいいかな?」
「はい」