なんでも音兄が言うには、かな兄は私の世話をするのが楽しみで仕方なかったらしい。
『満月が甘えてくれるぅ〜〜っ!!』
ってなテンションだったらしい。
音兄が苦笑してたよ。
「じゃあ、今日は早めに寝るね」
「あぁ、おやすみ」
「おやすみなさい」
私はガチャ、と扉を閉めた。
遠ざかっていく足音に耳をすませて、聞こえなくなってから私はそろりと動き始めた。
カラコンとウィッグをとって軽くシャワーを浴びる。
お風呂からあがると寝間着ではなく、白いワンピースに着替える。
髪を乾かして再びウィッグを被り、カラコンをつける。
時計を見ると、時間は夜の十一時。
この時間なら大丈夫かな……
そっと部屋の電気を消して廊下に出る。
誰一人いないのを確認して、私はある場所へ向かった。
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コンコン、と軽くノックをすると、少しして扉の向こうから微かに声が聞こえた。
ガチャ、と扉が開くとその人は少し目を見張った。
「どうしたんだいらこんな時間に……」
「夜遅くにすみません。ちょっと、冬麻さんと話がしたくて」
今いいですか?と聞くと部屋の中に入れてくれた。
「ありがとうございます」
「いや、まだ起きていたからね、気にしなくていいよ。どうぞ。散らかっているんだけどね」