雪靴の紐を締め、薄綿の羽織を引っ掛けて、礼は家の戸を引いた。
「兄様、あの、数が書いてある札は持ってる?」
「大丈夫だ」
懐を叩いてみせると、妹の梨春がほっとした顔になった。
「行ってらっしゃい」
戸口に出て手を振る梨春に、礼も手を振り返した。
皇城の試しは、今年も千人近くが受けている。
今日、及第者は、試しの朝に配られた割札の番号が皇城の門に貼り出されるのだが、早いうちに行かないと混雑して門に近づけない、と塾で聞いていた。
晩冬のまだ暗い早朝、礼が家を出たのはそのためである。
昨日は暖かくて、地面の雪が少し融けた。
それが夜の間に凍ってしまい、踏ん張らないとあっさり転びそうだ。